「安ければ売れる市場」ではなくなった!?MINISOの躍進に見るインド市場の変化

作成者: fujimoto|Jul 28, 2026 1:33:08 AM

「インド市場」と聞くと、皆さんはどんなことを思うでしょうか。
世界最大の人口を抱え、高い経済成長を続ける巨大市場。日本企業にとっても、今後ますます重要なマーケットとして注目されています。
一方で、「価格に非常にシビアで、安さが何より重視されるというイメージも根強くあり、これをご覧になっている皆さんの中にも、そういった印象をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
しかし、現地で生活し街を歩いていると、「安ければ売れる市場」という一言で片づけてはならないことに気づかされます。それを象徴するのが、インド市場における「MINISO(メイソウ)」の躍進です。
インドに拠点を持つK&Lは、中国発の生活雑貨ブランド「MINISO」の躍進から、インド市場のトレンドといまを紐解きました。

 

どこもかしこもビジネス

インドで生活していてまず驚くのは、街そのものがマーケットになっていること。
道路脇ではスイカやココナッツなどのフルーツを売る人、軽食を提供する屋台、小さな雑貨店など、至るところで商売が営まれています。
もちろん、露店が多い国は世界中にありますが、インドで印象的なのはその背景にある人々のマインドです。

インドは人口が多く、国内での競争が激しいことから、「自らの力でキャリアや収入を確保し、競争を勝ち抜いていくという強いマインドセットが感じられます。そのため、お金を稼ぐことや事業を成功させることに非常に前向きで、子どもの頃から自然と起業家精神やハングリー精神が育まれているとも言われています。

「石橋を叩き続けてから渡る」日本と、「失敗を恐れずにとにかく突き進む」インド。
何かにアプローチする際、 日本では入念な準備をしてから臨むことが好まれる一方で、インドでは不完全でもまず行動を起こす傾向にあります。その荒削りながらも圧倒的なスピード感が、インド市場全体の凄まじい活気を生み出しているのかもしれません

そして、この「挑戦する文化」は、売り手だけでなく、買い手側の姿勢にも表れているように思います。

 

新しいブランドを受け入れる市場

インドのショッピングモールには、世界中のブランドが集まっています。
その中でもここ最近特に人気なのが、「MINISO」です。
中国発の生活雑貨ブランドであり、ユニクロに似た看板と、無印良品とDAISOを組み合わせたような日本風の店舗や商品デザインで、数年前にある意味日本でも話題となったブランドです

文房具やコスメ、スマホ関連グッズ、ぬいぐるみなど、多彩な商品を安価で取り扱うMINISOは、都市部を中心に多くの店舗を展開しており、インドでは現在約250店舗まで拡大。若者を中心に高い人気を集めています。
20267月現在、インド国内ではユニクロ19店舗、MUJI3店舗)

※MINISOは、以前は日本国内にもいくつか店舗を展開していましたが、現在は日本から撤退しており、実店舗は存在しません。

 

売っているのは、雑貨ではなく世界観

MINISOは、「手に取りやすい価格」をブランドコンセプトとして謳っていますが、インドで急成長を遂げた大きな要因は他にあります。
それは、バービーやスター・ウォーズ、サンリオなど、世界的人気IPとのコラボ商品の販売です。
これにより、新たな層への認知拡大やファンの熱量を活かした売上増加、ブランドのイメージ向上といった効果をもたらし、現在もその熱気は続いています。

また、どのキャラクターが出るかわからないという“開ける体験”そのものを楽しむエンタメ商品「ブラインドボックス」の販売が、その勢いをさらに後押し。このブームの火付け役とも言われるのが、世界的に人気を集めたラブブです。
開封する瞬間のワクワク感、お気に入りのキャラクターや商品をSNSで共有する楽しさが相まって、ブラインドボックスは新たな消費体験として広がっています。

雑貨を買いに来ているというよりも、キャラクターや作品の世界観を楽しみに来ているといった、インドの若者が大好きな“体験重視”な空間を提供することにより、お客さんを惹き付けているのです。

 

挑戦する文化だからこそ、ブランドも育つ

権利範囲の整理や厳格な品質チェック、ロイヤリティ管理IPライセンスの許諾には、実はさまざまなハードルがあるとされています。
しかし、その分キャラクターアイテムは、ブランドの世界観や限定性といった付加価値を提供しやすく、単価の底上げや収益の向上にもつながります。MINISOも安売りから脱却し、高付加価値アイテムを売り出すブランドへとシフトしつつあることが伺えます。

こうした価格だけで勝負するのではなく、付加価値の高い商品を展開してブランドの価値を高める考え方は、ユニクロや無印良品もかつて行ってきた戦略です。
一見すると、その手法を真似てインド市場で展開しただけのようにも見えますが、体験への関心が高まっているタイミングと、若者にフォーカスした戦略とが上手く重なったことが、MINISOをグンっと成功へ導いたように思います。

私たちK&Lがインドに拠点を置き、日々現地のビジネスに触れる中で感じるのは、インドには「挑戦する文化」があり、新しい価値や世界中のブランドを受け入れ、育てる土壌があるということです。そしていま、インドはもはや「安ければ売れる市場」ではなくなりつつあります。
リアルな視点でインドの日々の生活を見ると、人口や経済成長率といった表面的な数字だけでは捉えきれない変化を目の当たりにします。この変化こそが、これからのインド市場を読み解くヒントになってくるのかもしれません。